第3話 それぞれの思惑
「着きましたよ、ファイナさん、昴治さん」
運転席からエリナは後ろの二人に声をかけた。
「ありがとう、エリナさん」
「悪いね、乗せてもらっちゃって」
「いえ、ちょうど仕事明けでしたから。ではファイナさん、また明日」
「ええ」
エリナ=リグビーは二人に会釈をして車をスタートさせた。
彼女はファイナの祖父・ロレンス=篠崎が院長を務める『篠崎総合病院』に勤務する看護士であり、ファイナの出身校『チタニアメディカルカレッジ』のひとつ後輩でもあった。
「ここがコンラッド博士の自宅か・・・」
「さすが権威があるだけに立派ね・・・」
彼の自宅は代官山の一角にあった。
敷地にはあまり恵まれていないが、それを感じさせない造りがそこにはあった。
そんな瀟洒な家屋を見て、ファイナはひとり物思いにふける・・・・
「ああ・・なんて素的な家なの・・・・・そう、昴治と未来を生きるステージにふさわしい・・・・・(*'ー'*)ふふっ♪わたしったらひとりではしゃいじゃって! キャッ(^^*))((*^^)キャッ・・・ネぇ・・昴治・・・」
振り向くファイナ、しかし・・・
「ゴメンクダサーイ!! ヽ( ´0`)σ【】・・・・留守ですか〜?」
昴治はとっくに門をくぐって玄関のドアを叩いていた。
「(o(-゛-;)”・・・人の話を聞け〜!!!( ̄□ ̄)9☆(((≪*☆*ドーーーン!!*☆*≫)))☆」
絶叫とともに放った火薬星が昴治の頭に命中したのであった・・・・・・
「o><)oモォォォォ〜ッ!!何であたし一人だけなのよ!」
明らかに不機嫌な声で、あおいは空に向かって叫んでいた。
―――― いま彼女がいるのは神宮外苑のとある球場のそば。
その近くにある広場で例の『ブラティカサーカス団』はテントを張っていた。
あおいはこれから就職希望と偽り、サーカスの内偵をしようとしていた。
通常、内偵は昴治の仕事なのだが、『元女優』という理由で半ば強引にこの役を押し付けられてしまったのである。
「昴治はファイナと二人っきりだし・・・・C= (-。- ) ・・・・も〜絶対許さないんだから!!!! <<o(>-<)o>>」
そこへ・・・・・・・・
「あおい先生〜〜!v(^o^)」
「アラアラ、ご機嫌斜めですわネェ〜( ̄▽ ̄) 」
不意に声をかけられて振り向くと、そこにはこずえとレイコがニヤニヤ顔で立っていたのである。
「あ、あなたたち昨日の・・・」
「はい!昨日はいろいろありがとうございました!」
「これから私たち、先輩に敬意を表して『あおい先生』と呼ばせていただきます!かまわないですよね!d(^-^)ネ!」
「・・・・・あ・・・・ありがとう・・・(^_^;)」
本当はちょっと参っているのだが・・・
「ところで二人とも学校は?(・_・")?まだ午前中でしょ!!」
「実は・・・・開店休業なんすよ・・・(^_^;)」
「(・_・")?なにそれ。学級閉鎖なの?」
「て、いうか・・・・・・・警察が・・・・学校の不正をみつけちゃったらしいんですよ・・・(;´▽`A``」
「なんか理事長が学校のお金をどっかにつぎ込んでいたらしくて。」
「ええ〜!!?ホントなの?Σ(゜口゜;」
「1時間目の授業の最中に突然放送が入ってクラス中大パニック!(⌒▽⌒;)
」
「しかも刑事さんが生徒にまで『事情を聞く!』なんていうからあたしら急いで逃げてきたんですよ!」
「生徒にまで・・・・・・もしかしてアンジェちゃんのことも?」
「さぁ・・・・・・・おそらく両方じゃないんですか?」
「あたしたちの教室、職員室から遠いし、しかも先生が休みで自習だったから、クラス全員でエスケイプしちゃって詳しくわ・・・_(^^;)ツ
」
「(;-_-) =3
フゥ・・・・・・・・・なんなのよ、うちの学校・・・・・・・・」
チョットどころかカナリ参ってしまったあおい・・・・・
「ところであおい先生は何してるんですか?彼氏とけんかでも・・・( ̄ー ̄)」
「(;゚゚)ウッ!・・・・・・・・あれはちょっとしたストレス発散よ・・・・ウ・・
ウンそう(._.;)!」
「超〜怪しい・・・|ー゜)ジッ→→→””
(゜-゜;)オロオロ ←←←ジッ(゜ー|」
「と、とにかく私これからお仕事だから・・・(^▽^;)””」
「あのサーカス団ですか?」
「えっ? Σ(~∀~||;)」
「実は今朝クラスメイトから『ブラティカサーカス団にアンジェちゃんに似た子がいる』ていう話を聞いたんですよ。
それで今日はもう学校なくなっちゃったし二人で確かめがてら観にいこうと思って」
「もしかして、アンジェちゃんがらみですか?」
「(~ヘ~;)ウーン・・・・・・・・・」
あおいは二人の追求に言葉を濁すしかなかった。
「アンジェ〜〜〜!!!!\(>0<)/
私の娘〜〜〜・・・・
いったいどこに消えたんだ〜〜〜〜!!!Y(>_<、)Y
・・・・・
帰ってきておくれ〜〜〜(T-T)ダラダラ(T^T)ズルズル-」
「(何なんだよ・・・・このおっさん・・・・・−−;)」
思わず昴治は愚痴る。
コンラッド=ビスケスは周囲をはばからず、男泣きに泣いていた。
最初は二人に対して紳士的に振舞っていたが、アンジェの名が出たとたんにセキが切れたように泣き出してしまったのである。
「これはもう・・・・ほとんどジョジョ泣きね・・・(
-.-) =зフウー」
「ジョジョってなに・・・(・_・?)ナンノコト?」
「・・・・・・・・・…((o(-゛-;)」
昴治の頭がテーブルにめり込んだまま話は続く・・・・・・・・
「・・・では、娘さんが居なくなった理由に心当たりはないんですか?」
「ないわけではないのですが・・・ここでは少し・・・日を改めて必ずお話いたします。
・・・・・・いまは・・・・タダ・・・・うっ・・・・・(ーー;」
「わかりました。すみません、貴重なお時間を割いていただいて」
「いえ、たいしたこともできませんで・・・」
そのとき、昴治が低い声で呟いた。
「・・・・・・・・・・・・スフィクス・・・・・・・・」
「!!!」
その言葉を聞いたコンラッドの顔に、わずかであったが緊張が走った。
「?・・・・・・どうかいたしまして?」
どうやらファイナの耳には届かなかったらしい。
「いや、なんでもないよ」
思わず取り繕ったものの、額からは汗がにじんでいた。
昴治は、そんな彼をただ見つめるだけであった。
「さっきのお兄ちゃん達帰った?」
二人が帰ってまもなく、5歳になるコンラッドの息子・マーヤが部屋に入ってきた。
人見知りの激しい彼は、二人が家に居る間ずっと自分の部屋から一歩も外へ出て行かなかったのである。
「ああ、ついさっきな・・・・」
「あのお兄ちゃん・・・・・・昔のお父さんの写真に写ってた人だよね?」
「・・・・・・ああ、そうだな・・・・よくわかったな・・・」
「お父さんの近くにいたし・・・・それに髪型も同じだったし・・・・」
「はは・・・・そうだな・・・・」
(彼は・・・・やはり・・・・・・)
コンラッドは昔を思い出し、複雑な気分になった。
―― ブラティカサーカス団執務室
「・・・・これが今回の入団希望者のリストです」
その男―――シュタイン=ヘイガ―は、履歴書の束をサングラスをかけた男―― 尾瀬イクミに手渡した。
「すまない、ヘイガ―」
イクミはそれをざっと目を通したあと、1枚の履歴書を束から引き出して改めて見直した。
「蓬仙あおい・・・・・・か」
「はい、私もその名を見たときは目を疑いました。」
「・・・・・・やっとお役人たちも本腰入れはじめたわけだな・・・」
「恐らく」
「恐らくでは困るんだよな、俺が!」
「申し訳ございません」
「いや、お前のことじゃない」
「はっ・・・・・・・それともうひとつお知らせが」
ヘイガ―はイクミに近づき耳打ちをした。
「・・・・・・・・・確かか?」
「はい、今日の夕方の便で到着することが確認されています」
「到着次第、すぐにこちらへ向かわせろ」
「わかりました。すぐにハイヤーを手配いたします。」
「頼む。それとルクスンは?」
「・・・・・・変わりありませんが・・・・・」
「ならいい。感づかれたら厄介だからな。奴でも」
「わかりました。では」
「あとヘイガ―、最後にひとつだけ」
「はい、なにか?」
「耳打ちするとき息を吹きかけるのは止めろ!(;`O´)o!気持ち悪くてしょうがない!」
「わかりました・・・・・⊂((〃 ̄ー ̄〃))⊃
その言葉胸にしまっておきます」
「しまうな〜〜〜!!!!!ΣΣ┏(|||`□´|||;;)┓」
・・・・ヘイガ―が去ったあと、イクミはあおいのデータを見て一人呟く
「3年ぶりの再会になるかな?昴治・・・・・・・」