第9話 けついとこうどうと

 

一方、矩継達情報部の面々は、脱走したソンを確保するべく都内を捜索中であった。

  「本部のカラボナさんから連絡、ソン=ドッポを代々木体育館で発見したそうです。」
  「よし、至急代々木体育館へ!!」
  「わかりました!!」
  「・・・・それから外苑西通りは工事中だから迂回してきて欲しいとのことです。」
  「西通りだと?」

 本部からの報告を聞いた祐希は疑問の声を上げた。

  「夕方高速から降りた時にはそんな看板出てなかったぞ。」
  「緊急工事じゃないの?」
  「それにしてもだな〜」
  「まって!弟さんの言い分のが正しいかも。」

 ファイナが先ほど受けた連絡内容を思い出していた。

  「カラボナさんは通りが工事中の報告を受けたけど、詳しい場所までは教えてもらえなかったと言っていたわ。」
  「その工事の報告は誰から入ったんだ?」
  「ブライアンからだと言ってましたが・・・確か彼は・・」
  「長期休暇中だったはず。そうなるとこれは虚偽報告。」
  「一体誰が?・・・」
  「・・・そういえば道路工事で思い出したけど、昴治はどうなったの?」
  「いや、あれはあんたがゴフッ!!・・・(@◇@;)」
  「(余計なこと言うからε=( ̄。 ̄;))それも含めてまた本部に連絡入れてみたら?」
  「そうだな。篠崎、本部に連絡を」

 そう矩継が言いかけた時、携帯が鳴り出した。

  「噂をすれば何とやらか。もしもし・・・・・

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  「矩継課長?」
  「かちょう〜どうしました〜?!」

 携帯を持ったまま動かない矩継に呼びかけるが反応はまるでない。

  「ショックで固まってる・・」
  「おい!!何があった!!答えろ!!」
  『そんなに怒鳴らないでよ〜!!こっちだって大変なんだから〜』 

 矩継の代わりに電話に割り込んできた祐希の怒鳴り声に、本部にいるカラボナ=ギニーは疲れ気味に反論した。

  「・・・・・・・ユイリィ=バハナと相葉昴治が自転車男に拉致されたそうだ・・・」

 徐々にショック状態から戻りつつある矩継がポツリとつぶやく。

  「自転車男?(‥ )ン?」
  「誰だよそいつ!!」
  「・・・・・・・・目撃証言によると特徴がエアーズ=ブルーに酷似しているそうだ。」
  「ブルーだと!!!」

 いきり立つ祐希。

  「それで昴治たちどこへ!!?」
  「中央線の線路に飛び込んで東京方面に逃走したらしい・・・・・・・ダイヤは現在も大混乱だそうだ・・・┗┓ ̄旦 ̄┏┛フフフ不・・・・ハハハ・・・
  「中央線で東京方面だから    ・・・・・・・・・・・外苑も遠くはないよね。(^。^;)・・・まさかとは思うけど。
  「あら、カレンさん・・・・さっきの話と合わせてみても、まさかではないと思うわ。・・・ふふ、昴治ったら・・・(▼∀▼)
  (うわ〜みんなキレかけてる〜\(;゜∇゜)/)じゃ、じゃあとにかく急いで」
     「大至急外苑前に!!Σ(ノ ̄┏Д┓ ̄)ノ ー!!〜」
 「れぇえっつ!!!!!w( ▼o▼ )w !!」
 「ごぉおおお!!!!!(|||ノ`□´)ー!!」

     「どうしていつもこうなる?(ノヘ;)」
   「あきらめろ・・・・・(_ _。)・・・」

  「微妙に明るい掛け声がいやぁあ!!!q(T▽Tq)」

 

 

 こうして、情報部の面々を乗せた車は一路外苑へ爆走する・・・・・


 

  「イッタ〜イ・・・~(>_<。)ゝもっとましな助け方がないのかあいつは・・・」

 ヴァイアの攻撃から間一髪で逃れたレイコは、体中をさすりながら愚痴をこぼした。

  「大丈夫ですか?・・・あの、、えっと、、、確か同じ学校の・・」
  「そう!あたし市川レイコ。アンジェちゃんと同じ学年の16歳。
   演劇部所属で、成績は中の上で得意科目は・・・
   て、何こずえと同じ自己紹介してるんだろ?(・"・;) 
  あたしのせいであおい先生が大変なことになっちゃったし・・・・。

  どうしよう・・・ねぇ、こずえ〜・・・・・(;_q))クスン
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こずえ?~(・・?))(((;・・)?」

 こずえとイクミは勢い余って互いのおでこに衝突し、脳震盪を起こして気を失っていた。  

  「もう〜〜こずえったら気を失ってる場合じゃないのに〜・・・アンジェちゃんどう思う?」
  「どう思うと言われても・・・無理に起こしては悪い気もするし・・・その・・・・」
  「あ・・・・別にそんな気を使わなくてもいいのよ、うん。勝手にぶつかったこずえが悪いんだし。」
  「は、はい・・・・あっ、誰か来ます。」
  「えっ、ホント!」

 アンジェの言うとおり、反対側の出入り口からチームブルーのメンバーが現れた。

  「おいミシェル・・・あの上空に浮かぶものは何だ?」
  「知らないわよ〜!前に来た時あんなものなかったし!」
  「ヴァイアだ・・・・・」

 後ろからブルーが呟いた。

  「あれが?」

 一同が上空の物体を見ている中、ブルーはアンジェたちのいる方向に目を向けていた。

  「やはり・・・」
  「どうした、ブルー?」

 ブルーは何も答えずアンジェ達の方に歩いていった。

  「あっ!待ってよブルー!!」

 慌ててミシェルたちはブルーの後を追った。その途端・・・・

  「ききききぇ〜〜〜〜!!!!」
  「な、なんだ〜!!」

 フーが担いでいた大袋から突然奇声を発したのは捕らわれていたヘイガー。
 ヘイガーはその中で激しく暴れだした。

  「あの方にまとわりつくこの臭い!!早く私を出しなさい!!!」
  「うを!!耐えられねぇ!」

 あまりの暴れっぷりにフーは袋を取り落とした。
 そこから這い出したヘイガーは再び人の姿を取り戻していたが・・・

  「きゃー!!!(/ω\#) ”」

 何も身に着けていない彼の姿にユイリィは目を覆った。
 そんなことはどうでもいい(むしろ快感な)ヘイガーは、イクミとこずえの姿を見て悲痛な叫びを上げた。

  「OH――――!!!!NO―――――!!!!」

 ヘイガーは転がるようにイクミの元に駆け寄った。

  「わっわわっわワタクシの尾瀬イクミになんなな何て破廉恥な真似を!!
   離れるのです!一刻も早く!!そして浄化するのです!!
   この方の魂が穢れる前に!!!」

 ヘイガ―は猛然とこずえに飛び掛っていったが・・・・

  「うるさ〜い!!私のイクミに指イッポン触れるな〜〜!!!!」

 寸前に目覚めたこずえのカウンターパンチを喰らってしまった。
 衝撃で床に転がったヘイガ―だったがすぐに立ち上がり臨戦態勢をとった。

  「ふっ、やりますね。このワタクシに一撃を入れるとは」
  「あんたこそ!あの体勢で急所を外すなんて素人じゃないわね!」

 イクミを巡りこずえとヘイガ―は一触即発状態だったが、残りのメンバーとりあえず二人を無視することにした。

  「・・・・・アンジェ=ビスケス」
  「は、はい!」

 それまで黙って自分を見つめていたブルーに声を掛けられ緊張した面持ちで返事を返す。

  「何の為に石を持つ?」
  「!・・・・・・・・」

 ブルーの短い核心を突いた問いに驚きを隠せないアンジェ。

  「父親の為か、己の意思か?」
  「父の研究を・・・・・願いを叶えてあげたい気持ちはあります・・・」
  「父親の為に自らを操り人形として生きていくのか・・・」
  「違います!」

 ブルーの言葉にきっぱりと強い口調で否定したアンジェの声に周囲は一瞬静まり返る。

  「あ、アンジェちゃん?・・・」
  「私は、自分の意思で石を持つことを決めました。覚悟はできています。」
  「・・・・・・なら、お前の好きにしろ。ただし、俺の邪魔だけはするな。」
  「はい!!」

 ブルーはそれだけ言うと、アンジェの元から離れていった。

  「え〜と、自分のいしでいしをもつ・・・なんの話なんだろ・・・( ̄~ ̄;)ウーン
  「馬鹿にはわかんない話( ̄ー+ ̄)」
  「なに〜!!_s(・`ヘ´・;)ゞ..」
  「(また茶々を入れて〜ε- ( ̄、 ̄A))あなたの力で上空の物体の中の様子分らないかしら?」

 ミシェルの悪態に呆れつつ、クリフがアンジェに声を掛けた。

  「出来ると思います。でも・・・・・」
  「私たちのことは気にしないで、もともとお尋ね者だし。
   政府関係者もいるけどすぐに口を割る人じゃないから安心して。」

  「え?えぇ、他言無用というなら黙っててあげるわよ。」
  「あの〜、そんな事したら〜…o(;-_-;)o」
  「へぇ〜、友達の秘密売ってもいいんだ〜。( ̄ー+ ̄)」
  「いいわけないでしょ!!?(;`O´)o」
  「と、言うわけだから好きにやっちゃって良いわよ!(*^-^)」
  「ありがとうございます。」

 上空のヴァイアの攻撃はいつの間にか止んでいた。
 アンジェは自らの結晶を手に包み込み、静かに念じ始める。
 しかし、その表情がすぐに強張った。

  「助けなきゃ・・・・」
  「えっ?アンジェちゃん?」

 アンジェはゆっくりとテントの中心に向かっていった。

  「駄目よ!そいつは音に反応するから近づいたら」
  「大丈夫です。あの人が守ってくれます。」
  「あの人って・・・?」

 ステージの中央に立つとアンジェは上空に向かって手を差し延べた。
 すると掌から一筋の光が放たれ繭玉に向かって伸びていった。
 やがてその光がアンジェの体全体を包み、彼女がふわりと浮き上がった。

  「レイコさん。」
  「はっはい!」
  「私は必ず戻ってきます!信じてください!お願いします!」
  「わ、分かりました・・・・・」

 その言葉を最後にアンジェは上空に消えていった。
 残された面々は言葉を失ってその姿を見送っていた。
 ただ一人、エアーズ=ブルーを除いては・・・・・