第7話 不安から焦燥へ
「俺の愛車『グッド=タートルランドV世』・通称チャーリーだ」
「それ、まんま自転車じゃん・・・(ーー;)」
「どうして車じゃないのよ〜。o(iДi)o」
「すまない・・・車検なんだ・・・」
「じゃぁ、フー達は?」
「今ごろクリフ達を乗せてリヤカーで追ってるはずだ。」
「すごい徹底振りだなぁ〜。」
「ふっ・・・・俺は地球にやさしい男だからな・・・」
「せめて・・・せめて、白馬だったら・・(πдπ)」
「(キラーン)すぐに用意させる。」
「(゜○゜)!マジかよ!!」
「さあ、いくぞ!」
「きゃっ!ブルー、なにを」
「お前を乗せると約束した」
「自転車の上でお姫様抱っこ・・・でもチョット嬉しい(^^*))」
とりあえず自転車に乗って出発した3人。
「ブルー、どの道で行く?」
「あの橋を使う。」
「東西陸橋?反対方向になるわよ。??(・_・*)」
「突破はお前に任せる。」
「げっ!俺がやるの?」
「嫌なら降りろ」
「・・・・・・・・やらさせていただきます(T.T)」
「えっ?なに?何をいってるの?」
「間もなく橋だ・・・うまくやれ」
「・・・・・・上り方向だからあの位置だな」
「すごく悪い予感がする・・・…o(;-_-;)o」
自転車は陸橋に通じる乗り物進入禁止のスロープを駆け上り、橋の入り口に到達した。
「列車は?」
「今通過するところだ。上手く合わせるよ。」
「ねぇ、まさかここから」
「よし、列車がいった!」
「いくぞ!!!」
「きゃああ!!!やめてーーー!!!(((p(>o<)q)))」
ブルーは自転車を陸橋の壁に向かって突進させた。
「ぶつかる―――!!!」
ユィリイが目をつぶった瞬間
ドン!
陸橋の壁が激突寸前に外側に吹き飛んだ。
自転車はその穴から外に飛び出す。
そして・・・・
「うぅぅぅぉぉぉおおおお!!!」
「いいやぁぁああああ!!!」
「すっっっげぇぇええええ!!!」
落下した昴治たちはそのまま中央線の線路にのって旅立った。
雄たけびと悲鳴と絶叫を残して・・・・・
サーカステント内は異様な光景に包まれていた。
テントの上空に、繭型の紅い塊がいつの間にか発生していたからだ。
その塊からは、粘着質の太い糸状の触手が無数に伸び、テント上部に張り付いて自身を支えている状態だった。
「なによ・・・・あれ・・」
「うう・・(ノヘ;)・・ジョンおじさん・・・」
「こわいよ〜・・・誰か助けて〜〜( p_q)」
観客や団員たちはすべて触手で捕らえられ、塊の中に吸い込まれていった。
残っているのはとっさの判断で難を逃れたあおいと、彼女の傍にいたこずえとレイコだけである。
3人は今ステージの物陰に隠れて脱出の機会を窺っていた。
「(それにしても・・・・・・なんなのよ、あれ!)」
あおいは上空を見つめながら、きつく親指の爪を噛んだ。
あの惨劇から数十分ほどたった頃であろうか。
上空の巨大な繭玉は徐々にその活動を止め、今では触手が徘徊する以外は自身が大きく躍動するにに止まっている。
・・・・・・・・・・カツ―――ン カツ―――ン
「誰か来る!」
前方にある観客出入り口の一方から足音が近づいてきた。
その人物は・・・
「あれ?・・・もしかして、アンジェちゃん?」
確かに、奇抜な格好ではあるがその姿と表情は、アンジェ=ビスケスその人である。
そして、彼女の隣にいたのは・・・
「あ〜〜!!!イクミだぁ〜!!\(^▽^\) !」
イクミに逢えた喜びに、思わず声をあげ立ち上がりかけたこずえ。
そこへ再び触手が襲ってくる!
「きゃああ!!」
「こっちよ!」
あおいはこずえの腕をつかんで引き、自分の傍に引き寄せた。
触手はしばらくこずえを捜していたが、やがてあきらめて繭玉に戻っていった。
「イクミ・・・・そばに行きたいよ・・・」
「こずえ〜泣かないでよ〜」
しくしくと泣きはじめたこずえにつられてレイコも嗚咽を漏らし始めた。
「おねがい、泣かないで2人とも」
二人の肩を抱き、必死に慰めるあおい。
その言葉には先ほどの不安は微塵も感じられなかった。
「(あの物体・・・・・声をあげた方向に反応していた・・・・もしかしたら姿見えていないかも・・・・だとしたら、残るのは・・)」
あおいは、先ほどの触手の動きでひとつの疑問に気づき、必死に打開策を考えていたのだ。
「またしくじったか・・・・くそっ!!」
グランは大きく舌打ちした。
彼は今、繭玉の中に張られた無数の蜘蛛の巣のひとつにいた。
そこから触手を操り観客を取り込んだのだが、予備知識だけで扱えるほどヴァイアは簡単ではなかった。
繭玉が巨大化するのに比例して、体力と精神の消耗も激しくなるからだ。
そのおかげでターゲットを探知する力は極端に低下し、捕捉する精度も衰えていた。
「やはり、いきなり二つのヴァイアを使うのはキツイな・・・ならば!」
グランは側にいたソンに言葉を囁いた。
言葉を聞いたソンは力なく頷くと彼の側から離れていく。
そしてグランは精神を集中し、取り込んだ観客たちの意識を少しずつ取り込むことにした。
「ふふっ、力が戻ってくる感じだ。いいぞ、この調子だ!」
グランは再び怪しい笑みをを浮かべ始めた。
その頃、サーカステントに1台の暴走自転車が接近しつつあった。
無論昴治たちである。
「間もなく到着だ」
「やっぱり近道すると早いな〜(^^_)ルン♪」
「私は生きた心地がしなかったわよ〜Y(>_<、)Y 」
あれから昴治たちは
千駄ヶ谷駅まで線路上を走行。
↓
駅通過直後に立体交差した道路に落下。
↓
そのまま外苑西通り入り現在に到っている。
「・・・・電線を切ったのはちょっとまずかったかな。(;´Д`A ```」
「ちょっとどころじゃないわよ〜o(;△;)o 」
「・・・目標発見」
「(・・?))?」
ペキョン・・・
「今なんか当たんなかった?」
「ヘイガ―だったような・・・・・('_'?)...ン?」
「気にするな・・・ただの爬虫類だ。あとでフー達が回収してくる。」
「はぁ・・・」
「何のことやら・・('';)」
「テントが見えた、止めるぞ。」
自転車は観客用出入り口の前に停車した。
「外苑だからてっきり並木の先のグラウンドだと思ってたけど・・・」
「こっちの公園だったんだ。」
サーカスが公演している場所、それは青年館西にある小さな公園。
敷地を南北に分ける植え込みの北側にテントは張られていた。
そのため・・・
「何だかえらく狭くない?ボロいし・・・」
「サーカスって言うか・・見世物小屋な感じがする・・・」
「文句あるのか?」
「何でブルーに文句いうの?」
「とにかくありがとう、じゃぁ行ってくるよ」
「ああ・・・・俺は少し休む・・・・」
ブルーはそう言ってユイリィに倒れこんだ。
「あっ、ブルー!!」
慌てて抱き留めるユイリィ。
しかしブルーの重さに耐え切れずに尻もちをついてしまった。
「痛た・・・・もう、ブルーったら・・・(*'ー'*)♪」
先ほどの取り乱し方とは打って変わり、穏やかな表情でブルーを膝枕するユイリィ。
そのブルーの瞳はユイリィに分からないように片方だけ開き、昴治に何か目配せをした。
彼なりに気を使ってくれたらしい。
「(ホントに不器用な奴)」
そう思いつつも、昴治は彼の行為に右手を軽く上げて応えるとテントに向かって走り出した。
「さてと・・・・」
少し寄り道をした昴治は、中に通じる通路の途中で右肩に手を当てた。
「中に居るのは・・・・・あおい・・・・昨日の2人?・・確か和泉さんと市川さん・・・・・あとイクミに・・・隣に居るのが例の彼女か・・」
そして、昴治は再び歩き出した。