第8話 砕かれる平穏 動き出す時間

 

 チームブルーのメンバー(フー=ナムチャイリュウ=ギイルクリフ=ケイミシェル=ケイ)を乗せたリヤカーが漸くサーカステントに辿り着いたのは、ブルーたちが到着して約十数分後のことである。

  「・・・・ったく!ずいぶん遅れをとっちまったぜ!」

 フーたちはブルー(&昴治)の後始末しながら後を追っていたので大幅に遅れをとってしまう結果となった。

 *後始末の一例

  ・東西自由通路の壁にあけた穴をダンボールガムテープで塞ぐ。
  ・自転車落下の際に切れた架線をビニールテープで繋ぎなおす。(リュウが感電したが気にされていない。)
  ・ブルーが自転車で轢いた新生爬虫類(ヘイガー)の回収

  etc・・・


  「しょうがないでしょう、車検が終わるの明日なんだし。
  ・・・まっ、私は楽だったけどね。」

  「乗ってる奴はな・・・・・さすがにリヤカーはキツカッタ。o( _ _ )o〜† パタッッ」
  「文句は言わないの。これでもずいぶん挽回したんだし!ブルーだって・・・・(;゜〇゜)
   あ―――――!!!!ブルー!!!」

 一番にブルーを見つけたミシェルは、彼がユイリィに膝枕をされていることに紛糾。
 即座に彼らの元に一目散。

  「ちょっと!私のブルーに何してるのよ!!」
  「あら、ミシェルさん。お久しぶり。」

 ユイリィはオトナの余裕で答える。

  「い〜い!ブルーは私のものなんだから勝手に手を出したら承知しないわよ!!!」
  「ええ、わかってるわ。でも〜、ブルーの方から誘ってきたときはどうしようかしら〜。
   紳士のお誘いをお断りするわけにもいかないし〜」

  「こ、こ、こ、このおんな〜〜〜!!!凸(▼▼メ)」
  「・・・いい加減にしろよ、お前たち。」

 フーが二人を取り成した時だった。 

 ガラスが割れる音と共に、テントが大きく揺れ動いた。

  「な、なんだぁ!!」
  「何が起きてるの?」

 テントはなおも轟音と共に揺れ動き、いくつかの悲鳴が聞こえた後収まった。


 ――― フーたちが到着する僅か5分前

  「!これは・・・深紅の・・・」

 ステージに一歩足を踏み入れたイクミは上空の物体を見て絶句した。

  「深紅と山吹の力の複合体か・・・」

 深紅のヴァイア能力は、自らを中心にして半径3〜4mの範囲で強力な結界創ること
 山吹のヴァイア能力は、多数のヴァイア及び媒介を取り込み結束させこと

 つまり、グランは山吹の力でソンやサーカスの観客・団員たちを取り込み、深紅の能力である結界をより強固に巨大化に出来たのである。

  「ヴァイアは人の精神とリンクすることで自らの力を増幅することが出来ます。
   でも、この方の精神は多くの邪心を感じます。」

 イクミの隣にいるアンジェが静かに語った。

  「君はここに居てくれ。俺の力であの結界を破壊する。」
  「えっ!だめです!その力では内部に取り込まれた人にも被害が」
  「しかし、他に方法はない!」
  <彼女の言うとおりだよ、イクミ>
  「なに!この声は・・・・・昴治?!」
  「イクミさん・・・・正面・・・・」

 アンジェはゆっくり正面を指差す。
 その先に居たのは、全身を白いマントで包みフードを目深に被った青年だった。

 

  「ねぇ・・・・アレ誰?」
  「あたしに聞いたって分かる訳ないじゃん!そうですよねぇ〜、あおい先生!」
  「えっ!・・・あっそうね・・・」
  「ふにゅ〜?r(・x・。)???どうしたんですか〜?」
  「・・・・・ちょっとね。ここから出る方法を考えてたから。」
  「で、分かったんですか?」
  「だいたいね。」
  「ホント!?\(^o^)/どうするんですか?」
  「・・・・あの物体は[音]に反応するの。
  最初の司会者の声で人々を襲い始めて誰もいなくなったら活動を停止したわ。
  そしてこずえちゃんの声で再び私達を襲った・・・・・」

  「そっかぁ、何か大きな音をたてて、そっちに敵を惹きつけるんですね!(*^^)v v(^^*) 」
  「その隙に逃げ出す!さっすがあおい先生〜頼りになる〜o(・∇・o)(o・∇・)o
  「ありがとう。それで囮なんだけど・・・」

 あおいはステージの横にある『大脱出』に使うはずだった水槽を指差した。
 そして胸元からナイフを取り出す。

  「このナイフをあの水槽に投げつけるから。
  ガラスが割れたらあの一番近い出口に向かって走って。
  分かったわね?」

  「は〜いヾ(´▽`*)ゝ」
  「あの〜イクミのとこじゃだめ?アンジェちゃんもいるし〜」
  「あそこは少し遠いから・・・あとその着グルミは今脱いで。走りにくいでしょ?」
  「わっかりました〜v(≧∇≦)v♪
  うっふふ〜∬´ー`∬♪後でイクミにこのないすばでーで抱きついちゃお!」

  「すごいねこずえ・・・全身レオタード一枚・・・・恥ずかしい・・・(_ _。)」
  「準備が出来たら言ってね。すぐに行動を起こすから」

 

  <ヴァイアのテレパス能力か・・・・・腕を上げたな昴治>
  <イクミ・・・まだこんなことを続けるつもりなのか?>
  <こんなこと?何のことだ?>
  <3年前の『ヴァイアプロジェクト』だよ。>
  <・・・今のお偉方のやり方で人類を救うなんて出来やしない。
   むしろ不要な人間を排除して自分たちの手駒だけを残していく。
   ・・・・・まぁ、都合の良いやり方と言えなくもないか・・・・>

  <イクミ!そのやり方はお前も同じじゃないのか?>
  <俺は違う!・・・・俺は同志を集め悪を倒しているだけだ!!
   ・・・・そう、俺に倒された者が悪なんだ!>

  <イクミ!!目を覚ましてくれ!!>
  <うるさい!俺は姉さんと約束したんだ!!
   ・・・必ず・・・夢を叶えるって・・・・
    それをお前は―――!!

   ガッシャ――ン!!!

  「!!」 「なに!!」 「あおいか!」

 水槽のガラスが砕け、それを合図にあおい達はいちばん近い出口に向かって駆け出した。
 しかし・・・

  「あっ!」

 いちばん後ろで内股で走っていたレイコが転んでしまった。
 そこを空かさず触手が襲い来る!

  「レイコちゃん!」

 あおいが一瞬早くレイコの前に立ちはだかる。そして・・・

  「キャ―――!!!」

 あおいは触手に捕まり上空に連れ去られてしまった。
 そしてなおもこずえとレイコを襲おうとした瞬間

   どさっ!ばさっ!

 二人は白服の青年に腕を掴まれ大きく投げ飛ばされてしまった。
 そのままイクミ達の方向に落ちていく。 

  「キャッ」「あっ!」 「イックミ〜!!」 「うわ〜!!」

 レイコはアンジェに抱かかえられ、こずえは(当然)イクミに衝突しそのまま後方に転がってしまった。
 白服の青年は襲ってきた触手を片っ端から粉砕し、最後に残った触手を片手一本で戦意喪失させた。
 そしてその触手に掴まり上空へと消えていった・・・・・


  「あ〜びっくりした。…o(;-_-;)o」
  「一体なんだったんだ?`s(・'・;) 」
  「相葉君たちは無事なのかしら?」
  「・・・・・発動させたようだな」
  「あっ!ブルー!!(^^*))」

 自体を察したブルーは身を起こしフーたちに指示を出した。

  「周辺一体を封鎖しろ。誰も近づけるな。」
  「オッケー!☆d(o⌒∇⌒o)b ★」
  「(○゜▽゜○)/ ヨッ!!(/ ̄□ ̄)。しゃぁぁ〜っ!!」
  「おい!ちょっと携帯借りるぞ!」
  「えっ、うそ!!いつの間に・・・」

 ユイリィの携帯を手にしたフーは、国連支部の番号へ電話を入れていた。

  「あっ、カラボナか?俺だよ、ブライアンだってば!・・・まぁ、それはおいといて。
  ソンの居所が判った。代々木体育館だ。
  グランの奴も一緒らしい。至急手配を頼む!
  それと外苑西通りは工事で通行止めになってるから迂回してきてくれ!それじゃ!」

  「・・・すごい口車ね。」
  『言葉の魔術師』と言ってくれよ。なんと言ってもあの昴治にナンパのイロハを教えたのは俺だからな!」

 嘘の連絡を終えたフーは、携帯を返しながらユイリィの言葉に自信満々に答えた。

  「でも不思議ね。本来なら私たちは商売敵なのに・・・・世も末かしら?」
  「ギブ&テイクと言うやつだな。」
  「そうとも言うわね。・・・ところであなた方の今回のターゲットは?」
  「へへ、それはこいつさ!」

 フーが肩に担いでいた大袋を開いて見せた。
 中に入っていたのは先ほどブルーが轢いた、新生爬虫類と化したヘイガー。
 奇妙な呻き声を上げながら失神している姿はあまり気持ちのいいものではなかった。

  「何これ・・・?新種の動物?」
  「何でも数年前のある実験中の事故でそうなったらしい。俺も最初写真で見たとき驚いたぜ。」
  「・・・・重要参考人だ。」
  「参考人ってどういうこと?今回の事件に関係しているの?
   ・・・・・というよりヒトなの?ρ(・д・*)コレ・・・」

  「おおっと!!ブルーにしては大サービスだが、これ以上は言えねぇな〜。」
  「ホ〜ント!この女にだけは甘いんだから?!も〜〜!(-,-メ)ρ))」
  「まぁ、とにかく中に入ろうぜ。様子が気になる。」